<ひらめきパズル! 面積迷路> 発売日:2021年12月16日 ジャンル:パズル 価格:500円 プレイ時間:5〜10時間程度(個人差あり) 有料DLC:なし 2015年にスマートフォン向けアプリ「面積迷路 完全版」としてリリースされたゲームのSwitch移植。 問題の内容は全く同じ。インターフェースや機能もレイアウトは若干違うがほぼ同じである。 ■パズル紹介 「面積迷路」は、長方形の面積を求める公式、すなわち「縦×横=面積」を利用して、 指定された部分の長さや面積を求めるパズルである。 「迷路」という表現は比喩で、答えに至るまでの考え方を迷路に喩えている。 多数のオリジナルパズルを考案している稲葉直貴(いなば なおき)氏によってつくられたパズルで、 本作の作問も全て稲葉氏が担当している。 簡単な問題ではそれこそ面積の公式に順当に当てはめるだけで解くことができるが、 少し難しくなってくると、  ・与えられていないけど、ここの長さ(面積)は○(平方)cm  ・実はこことここの長さ(面積)は同じだったんだよ!  ・ここに補助線を引けばここの長さ(面積)は以下略 のような踏み込んだ考え方が必要になってくる。 見た目から推測できないよう、図形は本来の形から意図的に少しずらして描かれている。 (あくまで「少し」であり、実際と大きく乖離するようなものではない) というわけで、長さや面積の関係と図形の概形を観察し、どうすれば答えにたどり着けるかを考えることになる。 また、全ての問題は小数や分数を使わずに解けるように作られている。 たとえば、縦が3cm、面積が16平方cmの長方形があるとき、横の長さは16/3cmであることが分かるが、 このように分数が登場する計算は使わない。3cm、16平方cmという情報は他の形で使うということである。 問題によっては小数・分数を使って無理やり答えまで導出できたりするが、おすすめしない。 ■ゲームシステム 問題は★1つから★5つまで5つのレベルに分けられており、各レベルに20問ずつ、合計100問収録。 どのレベルの問題から解き始めてもよいが、 同じレベルの問題は1番から順番に解いていく必要がある。 (2番は1番に正解しないと解禁されない。3番以降も同様。) 各問題ではクリア状況と、最速タイムが記録される。 パズルメインなのでシステム自体は割とシンプルな作り。 プレイ中のBGMや背景は変更可能。 解答を含め、数字はパネルで入力する。メモ数字を付箋という形で配置することもできる。 解答を入力し、正解なら問題クリア。不正解ならそのまま問題に戻る。不正解によるペナルティは特にない。 各種エフェクト類は省略できる。 問題に正解すると、解説(想定解き筋)が表示されるが、 分数や小数で無理やりこじ開けていない限りほぼ想定解か、それに近い形の解法になると思われるので、 基本的に考え方があっていたか確認する場面となる。 プレイ中にヒントとしてここの解説の前半部分だけ読むこともできるが、 考えてひらめく楽しさを削いでしまうので個人的にはヒントは使わないのをおすすめしたい。 全ての問題をクリアしても特に何かがあるわけではない。 ■よかった点 ○パズルとしての完成度 縦×横=面積、という誰でも知っている長方形の面積を題材にしつつ、 どうすれば答えを導けるか、その観察と考察をするパズルとしての魅力は満点。 特に道筋をひらめいたときのすっきり感、快感は筆舌に尽くしがたい。 「ひらめきパズル」の名前は伊達ではない。 自然数の範囲で工夫すれば解けるパズルならではの楽しさを味わうためにも、 小数や分数を使った強引な突破は非推奨である。 実際のところ、本作の良さのほとんどはこの1点に集約されているのだが、 パズルゲームなのだから問題の質が高いのは極めて重要である。 ■気になった点 ○メモ機能の有用性 メモは、まず付箋の色を選択し、そこに書く数字をパネルで入力してから、 タッチで動かして好きな場所に配置するという形式になっているが、正直使いにくい。 タッチ操作に対応しているなら、むしろフリーハンドで好きに書かせてもらえる方がうれしいし、 数字以外にも補助線とかも引けるから使いやすいと思うのだが……。 最終的に入力が面倒だったため、僕はメモ機能はほぼ使わずに問題を解いた。 ○一部のインターフェース 一部、アイコンの意図するところが分かりにくい部分がある。 (幸い、問題が発生しそうな操作に対しては直前に確認が入るようになっているが) また、数字を入力するパネルにおいて、「数字を1つ消す」というBackSpaceに相当するボタンがない。 数字は3桁までしか入力できず、4桁目を入力するとリセットされて全て空欄になるのだが、 入力ミスしたときはわざわざこうしないと入力した数字を消せないので不親切。 ○ボリューム 100問で500円。書籍の値段とかと比較すると決して高いわけではなくむしろ安い方だが、 Switchで発売されている他の(ペンシル)パズルの中にはボリュームが非常に多いものもあり、 それらと同じ土俵に立っているので若干ボリューム不足を感じた。 (しかももとはスマホゲーの移植だし、スマホ版は400円弱だし……) 100問といっても最初の20問くらいはチュートリアル問題だし、 このパズルの本当の楽しさを味わえるのが後半の問題ばかりなので余計にそう感じる。 200問1000円でも全然いいんだけどなあ。レベル3以上の問題のみを収録したDLCとか出ないかなあ。 ■個人的最難関問題 99番(レベル5-19)。 他の問題は解けなくても時間をあけて挑戦すればなんとかなることが多かったが、 この問題は何度挑戦しても道筋が全然見えず、かなり苦戦した。 (ヒントを見たい誘惑に幾度となく負けそうになったが、最終的にはヒントなしで攻略できた) 与えられた情報が少なく、初手の考え方が難しいことも拍車をかけていた気がする。 最終問題の100番はそんなに苦労せず、すっきり解けた。 ■総評 「縦×横=面積」という極めてシンプルなルール、だけど、だからこそ奥深い。 そんな「パズル」としての魅力がぎっちりと詰まった本作である。 悩めば悩むほど、ひらめいたときの心地よさは大きい。 終盤の問題は難しいが、思う存分悩んでもらいたい。 ゲームとしてのインターフェースには若干不親切なところもあるが、 基本的な部分は堅実に作られているし、メモなしでも十分クリアできる難易度(むしろひらめけるかの方が大事)なので、 そこまで大きく問題になることはないだろう。 特にペンシルパズルなど、硬派寄りのパズルが好きな方にはとてもおすすめしたい一作。 <執筆:izkdic @ 2022.01.25> == 以下、「ひらめきパズル! 面積迷路 ジーニアス」について追記 == <ひらめきパズル! 面積迷路 ジーニアス> 発売日:2022年3月3日 ジャンル:パズル 価格:600円 プレイ時間:5〜10時間程度(個人差あり) 有料DLC:なし 「ひらめきパズル! 面積迷路」(以降、前作)の高難易度版。 こちらも2016年発表のスマートフォン向けアプリ「面積迷路 ジーニアス!」のSwitch移植となっている。 作問担当は同じく稲葉氏。 基本的なシステムやインターフェースなどは前作と全く同じ。収録問題数も同じく100問。 ただし正解・不正解時の演出やBGMの対応関係など、一部異なる部分はある。 また、前作ではレベルごとに1〜20の問題番号が振られていたが、 今作ではレベルによる振り分けはなく、1〜100の問題番号が振られている。 そのうち、1〜10がレベル3、11〜50がレベル4、51〜100がレベル5の問題である。 前作同様、n番の問題を遊ぶためにはn-1番の問題をクリアしないといけないため、 必ず1から順に解いていくことになる。 全て解いても特に何もないのは前作同様。 前作をクリアしていれば、問題の難易度はちょうどよいレベル。 前作で得た知見は本作でも十分活用できるはずである。 一方、今作から遊ぶ場合でもレベル3の問題が10問あるので、 それで基礎的な考え方を身につければ十分攻略できるはず。 とはいえ、終盤の問題は前作のレベル5問題より難しい気がするので、気を引き締めてかかりたい。 (前作はほぼメモなしで解いたが、今作の後半問題では結構メモを使った) 個人的最難関問題は98番、99番、100番の3つ。 この3問は甲乙つけがたい難易度でいずれも相当に難しく、 まさにラストを飾るにふさわしい難問だと思った。 パズルとしての完成度は言わずもがなである。 前作をプレイして、パズルとしての魅力に引き込まれた人は、 本作にも是非チャレンジしてみよう。 <執筆:izkdic @ 2022.03.25>